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角煮曲線

「あなたは角煮を作ったことはあるか?」


今から約1か月前、私は豚の角煮にはまっていた。
(料理をするようになって、一部の人たちから「Sone's キッチン」と
呼ばれるようになったぐらいなので)


6月の後半に入ったくらいから、角煮を3回ほど作った。
レシピは脇屋シェフのものを元にしている。

自分で言うのも何だが、角煮に対して結構なこだわりがある。
それが大きさとやわらかさだ。
角煮の大きさは縦4cm、横3cm、高さ4cmの立方が一番美しく、
 同時に食べやすい大きさ

箸で脂身から繊維方向に沿って縦にすっと切れない角煮は角煮とは言えない、
 ただの豚の煮物だ


自分の中でこんなルールを決めるぐらい、角煮にはこだわりがある。


角煮を作るときに、圧力鍋を使う人がいるが、私は圧力鍋をもってないので、
普通の鍋で時間をかけて煮込むしかないことになる。
レシピ的には、
下ゆで1時間、煮込み2~4時間と考えられるので、
まあ最短でも3時間がかかる料理だということ。


3回角煮を作ってみて、思ったのが、肉のやわらかさの最高点
(その肉が持っているポテンシャル(やわらかさ)の限界点)と煮込み時間には
ピークタイムがあるということだ。

たぶん、こんな感じに。

このグラフは私が3回角煮を作った時に思ったグラフを
示しただけなので、数字に特に意味はない。
(使う食材や調味料、使う調理器具、ガスかIHか、「中火」の時の熱量、
鍋内の温度などでブレが出ることは間違いないので、あくまで例である)

説明しやすいように、このグラフを「角煮曲線」と表記する。

煮込みを始めた段階では、まだ下ゆでしただけで味もしみてないし
豚肉の繊維が壊れていないので、箸はおろか、フォークでさえ切れない
レベルだ。

その後煮込み時間が経過していくにつれ、角煮に色味がつくと同時に、
肉の繊維質が壊れ始め、ほどけていく。これがやわらかさに直結する。
経験上では、これが始まるのが煮込み開始後1.5時間後だと思う。

そして、そのあとに来るのが、角煮曲線の山、すなわちやわらかさの
ピークタイム
である。
このタイミングが、一番肉がやわらかく、箸ですっと切れるところだ。
口に入れた瞬間とろけるような脂の旨み、最高の舌触りが得られる
瞬間
であろう。
別な言い方をすれば、それがその豚肉のポテンシャルの限界点ということだ。
シェフとか一流の料理人であれば、この点を見抜けるのだと思う。

しかし、残念なことにあまり味がしみていないケースがある。
となると、「味がしみてないからもっと煮込むか」とか、ここまで来ると、
「もっと煮込めばやわらかくなるんじゃね?」とか思ってしまう
衝動に駆られる。(これは一種の錯覚ともいえよう)


そこで煮込み続けると、肉は今までの流れとは逆に急速に硬くなっていくのである。
最初に作った時、この錯覚にはまってしまった。
つい1時間前まで、やわらかかった角煮を引き上げた時には、
肉の赤身の部分が黒くなっていて、硬くなってしまっていた。
科学的な解明はできないが、繊維質が凝固するほうに向かって行って
しまったのではないかと思う。

角煮のたれの濃度と角煮曲線のピークが一致しないときには、
曲線のピークを優先して、たれを別な鍋で煮詰めてかければ
この問題は回避できる
はずだ。


レシピでは○時間煮込むとなっているが、料理は化学のように
完璧に計算で表すことができないし、計算が同じだとしても同じ味に
することはほぼ不可能だと私は思っている。

五感すべてを使って、角煮曲線の最高点となる煮込み時間を
探し当てる必要がある。



ここまでくだらない記事を読んで頂いた読者様にはとても感謝したい。
角煮を作る時にこの記事が当てになるとは思わないが、
頭の片隅にでも置いていただければ幸いだ。